秋の終わりの韓国、ソウルまで友達に会いに行った。
名前はスジ。出会った頃から妙に温度が合う奴で、
韓国人だけどそんなこと意識させないくらいには日本語がわかる。
東京では一緒にいろんなことをして遊んだし、よく真夜中に酒を飲んだ。
スジは何年か前に地元、ソウルに帰って絵を描いている。
前々から 韓国きてよ! と猛プッシュされていたんだけど、10月頃、急に気が乗って航空券を取った。
大切な友達、あいつの生まれた街、暮らしを見てみたいとおもった。そんな経緯だ。
昼頃、成田からの便で3時間弱。
いつもの東南アジアよりもぜんぜん近かった。
空港からバスでソウル市内、スジの住むキョンボックンという街を目指す。
仁川空港からバスで1時間、キョンボックンの駅前のスターバックスでスジと待ち合わせた。
そんなに久しぶりでもない、半年ぶりくらい。
いつも会ってるかのように再会してサムギョプサルと美味いビールを飲んだ。
スジの家は兼アトリエでこじんまりとしたビルの2階から4階、それと屋上だ。
猫が2匹いる。トウキョウ と ドド だ。
猫にトウキョウとつけるのがとてもあいつらしい。
屋上からの眺めは素晴らしく、わりと近くに小さな山も見える。
アトリエを片付けて布団を敷いたら立派なおれの部屋ができた。
そんな最高の環境で毎日ビールを飲み、猫たちといい時間を過ごした。
昼間スジが仕事に行っている間はひとりでソウルをうろうろした。ナンデムン、トンデムン、
市場でごはん食べたり学生街をうろうろして買い物をしたりした。
街は東京と同じくらい栄えている。
道端に食べ物の屋台があって人が寄り合っているのがノスタルジーな感じだ。
夜はスジといろんなものを食べた。サムギョプサルから始まってダッカルビやプルコギ、コリアンバーベキュー。もちろん毎食ビールはかかせない。たくさんの食べものでもてなす文化の韓国ではだいたい何を食べても量が多く、頼んでもないキムチや漬物なんかもたくさん出てくる。毎食ビールとごはんでお腹がパンパンだ。
帰るとリビングで2人で飲み直す。一緒にクイーンの映画を観にいったもんだからクイーンばっかり聴いていた。
最後の日はスジが休みをつくってくれて、一緒に観光した。昼過ぎの散歩、寝起きのチキンとビールから始まって、道に迷って閉館に間に合わなかった画廊、スジも初めてのソウルタワー、夜中はイテウォンでクラブなんかに行ってみた。
ソウルのクラブはパブっぽくイカしてた。
流行りのEDMは東京と変わらないが、誰でも楽しめる自由な雰囲気でしこたまジャックコークを飲みながら知らない流行歌を楽しんだ。
次の日は帰るだけ、朝、スジがつくってくれたジャージャー麺を食べて、スーパーでお土産を買いつつバス停まで送ってもらった。
最後の最後まで2人してくだらないことを言っている。でもきっと同じような気持ちだろう。
なんとなく言葉に詰まる。
スジもわりと頻繁に東京にくるし、会えないということよりも、短い間、2人で生活した日が終わることに少しだけ寂しいんだろう。
ソウルでの5日間、なにも決めずにダラダラと過ごした。毎日2人で飲み、これといって何を話すわけでもなく、昔話やくだらないことばっかり言っていた。
お互いわかっていると思うから普通のことは言わない、言えない。
口にはしないけどスジはとても全力でもてなしてくれていたし、時間もつくってくれた。スジはとても人を大事にするいいやつだ。
その心づかいに胸が苦しくなるくらいに嬉しかったけど、照れ臭い。スジは感じてくれていると思う。
いきなりそんな事を口にするような関係性でもなく、そういうところはお互い態度で会話してるみたいだ。
スジもおれもはるばるソウルまで来たことを喜んでいてくれたと思うし、おれもどうなることやらと思っていたけど思い出すととても尊い、最高の時間だったと思ってる。
予定より少し遅れてバスは来た。
あまりにも急だったから、お互い 気をつけてね。 ありがとね。みたいな感じでハグをして別れた。スジはバスと反対に向かって歩きながら手を振っていた。
海の向こうまで人に会いに行く旅は初めてだったけど、とてもドラマチックで良いものだと思った。
スジとも東京で飲んでいるのとはどこか違う、変な感じだ。あいつもそうだろう。
やっぱりいつもより張り切っていたし、すこし表情が違った。
東京にいると会いにきてもらうことの方が多いけど、みんなに会いに行きたいと思った。