久しぶりに書いてみる。

 

夜だ。

ついこの前までまだ暑かったのに、もう肌寒い。

リズムアンドブルースが格別に合う季節になってきた。

夏も最高だけど、冬に向かって寒くなって行くこの季節も最高だ。

 

 

おれは相変わらずに東京では地味に過ごして、まとまった現金ができると何処かへ旅にでるような生活をしている。

だけど、未だにアジアから出ていない。

アジアという大きな沼に浸かってしまっているみたい。

特になにも考えずに無造作な旅を続けているうちに、アジアの奥深さにずるずるとはまっていっているみたいな感覚だ。

ここ最近はわりと活発にキビキビとした(おれの中では)旅をしている。

今年に入ってからマレー半島シンガポールから陸路で縦断してみたり、インドネシアのジャワ島を列車で横断したり、すこし忙しなく、だけど濃い日常だ。

 

 

つい先月の終わりには友達とバンコクに行ってきた。

たまたま激安の航空券を見つけたから、そのまま予約してふらっと乗ったんだ。

バンコクは何年か前に旅したのを皮切りに、東南アジアの国への玄関口なので、乗り換えなんかがあるたびに調整して遊びにきたりしていた。

ローカルな長時間移動の毎日や、ど田舎でのアグレッシブな体験での疲れを癒しに旅の帰りに寄り道して2〜3日ゆっくりする、みたいなのが通例だ。

毎日昼過ぎまで寝てラーメンなんかを食べたりマッサージに行ってだらだらと過ごすのがおれのバンコクの最高の贅沢だ。

 

今回男2人旅で、5日くらいだったけど、ハードに遊びを詰め込み、夜毎ビールをたくさん飲んであっという間の時間だった。

バンコク初めての友達のおかげで久しぶりにベタな観光地にも行きつつ、おれが前から行ってみたいと思っていたシリラート博物館(シリラート病院に併設されていて死体とかが展示されてる)にも行ったりした。

 

 

バンコクは今まで旅した中でも一番よく滞在する街。

それに東京で生まれ育った街っ子のおれには東南アジア屈指の大都市、バンコクがとても落ち着く。

昔のバンコクをよく知るバックパッカーや旅人の先輩たちが言うには、バンコクはどんどんつまらなくなっているらしいけど、少なくともおれには、シンガポールやクアラルンプールよりも東南アジアのカラーがあるし、どんどんつまらなくなっていく故郷、東京と比べたらこんな最高な街はないような感じだ。

 

おれのバンコクでの最高の遊び場はストリート。

もちろんバンコクには東京以上に遊びがあると思うし、イカしたクラブもバーもある。

おれは東京では特に、クラブが好き!とか オシャレなカフェ行きたい!とかいう感じでもない。

東京でもそうだけど、だいたい夜型生活。

街を延々と歩いて人を見たり、誰かとちょっとしたコミュニケーションを取るのが楽しいんだ。一人旅だと特に。

 

 

 

明るいうちからパブのテラスでビールを飲む。

ハッピーアワーでビールが安い店はいくつか知っている。

だいたい暇そうな店員のおにいさんと「Where are you from?」から始まるような適当な話をしながらビールを飲んで、今日はなにしようかとか考える。

 

 

 

スクンビット通り沿いの屋台。なにか食べようかと歩いてると 歩道の端に並べられたテーブルでなんだかわからないけど美味しそうなものを食べているゴーゴー嬢がいる。「それ何?」って聞くと答えもせずに「美味しいから食べてごらん」と一口くれる。だいたい美味しいんだけど、一口で満足してしまうことが多い。

 

 

イカウボーイのビアバー。かわいいとは言いがたい感じの元気な女の子が隣に座ってくる。

1杯奢らせられながら「今日は忙しい?」「今日は日本人が多いわよ」みたいな話をする。

バイクで来ているという彼女はあからさまに酔っ払ってるけど、「あと2杯でやめておけば問題ない」とのこと。

給仕のおばちゃんまで「私にも飲ませて!」とか言ってきて図々しさに押し負けて奢るとテキーラをショットがくる。しかもだいたいおれの分も来る。どんな国でもおばさんのパワーには勝てない。

 

 

アソークの駅前で物乞いをしてる小さな男の子と女の子。1回お金をあげたら、それから顔を覚えられて見かける度に走ってくる。昨日も一昨日もあげたじゃんとか言いながらも彼等もプロ。黙ってきらきらとした目で訴えかけてくる。「ハングリー?」と聞くとめちゃめちゃに首を縦に振るから、「しょうがないな〜」と10ルピーずつあげると「昨日は20ルピーだったのに!」とかいいながら走り去る。どうしても子どもたちには弱い。

 

 

 

今回久々に行ったカオサン。夜中に路上に出る屋台のバーのイスに座るとすぐに日本語で話かけてくるお姉さん。

「日本が好きで、この前まで住んでたんだよ〜」とベロベロで話しかけてきた。

東京に行ったことがあるらしく、「スカイツリーどうだった?高かった?」と聞くと「うん。値段がね。あれだったら飲み屋でビール飲んでた方がいいわ。」とか話しながら夜を更かす。

 

 

 

夜の街は特にだけど、みんなフランクでコミュニケーションすることに敷居みたいなものを感じないし、顔見知りくらいの自然な対応が気持ちいい。

堅苦しくお互い名乗り合うようなこともないから、よく道や店で会うしダラダラといろんな話をしたりするけど、名前を知らなかったりする。

 

たまたま居合わせた人となんとなくその場を共有するというのが贅沢な時間だ。

バンコクの街にはそんなものがそこら辺に転がっている。

おれがアジアに行く一番の理由は名所でも名産でもなく人なんだと実感する。