ジェリーリーが死んだ夜

 

最高のロックンロールピアニスト、ジェリー・リー・ルイスが死んだ。

 

"ロック歌手 ジェリー・リー・ルイスさん死去"

というどこか間抜けな見出しのニュースが夜明け前に流れてきた。

 

ジェリー・リー・ルイスは、殺し屋がニックネームのイカれたピアニストだ。

同世代のピアニスト、リトルリチャードと並んで、おれの一番好きなロックンロールピアニスト。

ちょっと違う路線にはレイチャールズという神様もいるけど。

 

ロックの楽器といえばギターってイメージで、

ピアノなんてどこか退屈な楽器だと思っていた中学生のおれに、

ピアノは最高にイカした打楽器だと、

ハイロウズの曲の中から飛び出してきたジェリーリーが教えてくれた。

 

ピアノをスタンディングで弾き倒し、

鍵盤を足で蹴り上げてシャウトする、

彼のスタイルはまさに殺し屋だ。

 

1950年代の真ん中あたり、

チャックベリーにエルヴィス

エディコクランにジーンヴィンセント。

リトルリチャードにジェリーリールイス。

彼らがやっていた真新しく最高にエネルギッシュな音楽は"ロックンロール"と呼ばれるようになって、

彼らに憧れた子供たち、

ビートルズローリングストーンズ、ザ・フーみたいなやつらがさらに火を大きくして、

ロックンロールは世界中のポピュラーになった。

 

70年弱くらいのロックの歴史の中で、

もちろんたくさんのめちゃくちゃかっこいいミュージシャンが次から次へと出てきたのだが、

結局、チャックベリーのギタースタイル、

リトルリチャードの絶叫。ジェリーリーの鍵盤連打、みたいなのがロックの至高なんじゃないかと頻繁に思う。

ロックのピアノの始祖ジェリーリーを誰も越えないんだ。少なくともおれの中では。

 

もちろんニッキーホプキンスやドクタージョンなんか最高だし、

ビリージョエルみたいな、

まるでニューヨークの摩天楼に反射するようなピアノも大好きだけど。

 

もしもこれからピアノを弾けるようになることがあったとしたら、

間違えなくピアノのチェアを粗大ゴミに出して、ジェリー・リーをお手本にするだろう。

 

 

エディコクランやバディホリーは20歳そこそこで亡くなってしまった。

リトルリチャードやチャックベリーも、女王ワンダジャクソンもここ数年で亡くなった。

エルビスもボディドリーもジーンヴィンセントももういない。

そしてジェリーリー。

ロックンロール黎明期のミュージシャンはもう誰一人残ってないって言ってもいいかもしれない。

 

ロックンロールが薄まってきた気がするこの時代と、元祖ロックンローラーたちの死。

時代がまたひとつ変わるような気がする。

ただもちろん、若いロックバンドも最近けっこういるし、みんな最高にクール。

ロックンロールが無くなることはないだろう。

 

それにジェリーリーが死んだって、

彼の作品は残っていく。

 

https://youtu.be/Fw7SBF-35Es